60歳時に企業型DC確定拠出年金(以下企業型DC)を一時金で受け取るべきか、年金か、それとも別の対応か。一つの作戦例として、一時金でもなく年金でもなく、企業型DCの資金を全額iDeCoで継続運用があります。
まず、税金控除の観点からお得な手順としては下記がありますが、この手段が使えない場合も多いでしょう。
(1)
60歳で企業型DCを全額一時金で受け取り、その際に退職所得控除の権利をガッツリ活用し、その時点では会社からの退職一時金は受け取らずに継続雇用を選択する。
(2)
それから約5年後に退職所得控除の権利が元の金額まで復活してから、その時点で初めて会社からの退職一時金を受け取れば、退職所得控除の権利を(1)の時と(2)の時に2回フルに活用できて2度オイシイ。
これに関する法令は『所得税法施行令 (退職所得控除額の計算の特例)第70条1項二号』ですが、しかし退職金を60歳で受け取らずに約65歳まで受け取りを延期する、つまり企業型DCを一時金で先に受取りそこから4年を超え約5年の間隔をあけた後に会社から退職金を受け取る、という対応ができない勤務先ではこの手段が使えません。
その場合の次の手段として、企業型DCの資金を60歳では一時金で受け取りせずiDeCoで継続運用し、さらにiDeCoへの拠出金も毎月出資し資金をどんどん膨らませます。最終的には約65歳付近で完全退職時にiDeCoの資金を年金ではなく一時金で受け取り、退職所得控除の権利をフルに利用します。約5年間の延長雇用により退職所得控除の控除額も60歳時点よりも膨らんでいる状態にもなります。あくまで一つの作戦例でして、ご自身の責任により最新法令を確認し対処ください。
『所得税法施行令 (退職所得控除額の計算の特例)第70条1項二号』の調べ方
- まず「法令検索」で『所得税法施行令』を検索し、
https://elaws.e-gov.go.jp
開いた先のページで(退職所得控除額の計算の特例)第七十条を見つけます。 - そのすぐ下の「二」に「その年の前年以前四年内」の記載があり、さらに続けて「十九年内」や「重複している場合」の記載もあります。
前回退職所得控除を受けた時から、前年以前の4年や19年を超える間隔があいて「重複している場合」を外れて退職所得控除を受ける条件に適合するかどうかが重要ポイントです。